Friday, April 9, 2010

文化の盛り上がり≠人口増

日本の地方自治体の取り組みを見ていて思うのは、

文化の盛り上がり=人口増加

という等式が、どうも先入観としてあまたの中にあるのではないか?ということです。

町おこし、が成功すれば若い人も戻ってきてくれる、という希望的な観測ですが、世界に目を向けてみれば、それは必ずしも真実ではないことが良く分かります。

例えば、ヴェネチア。

映画においては国際映画祭が、アートの世界ではビエンナーレが世界的に有名ですが、ヴェネチアの人口がここ50年減り続けていることを、「町おこし」を考えている人は認識したほうがいい。

1951年には17万人以上居たヴェネチア島の人口は、1978年に10万人を切って、昨年ついに6万人を切りました。50年で三分の一になっちゃったんですね。

でもビエンナーレも国際映画祭も非常に盛り上がっています。

この場合、盛り上がっている、というのはインバウンドで人がたくさん訪れて、その間にオカネを落としてくれるようになった、ということです。その代わり、人はどんどん減っていった。観光客向けに建物の一階は全てレストランとみやげ物屋になり、観光客が興醒めするような改装は出来ない、ということで住みにくい街になってしまったんですね。

実は、これと同じこと「世界遺産」でもよくありますね。世界遺産になってしまった途端に、

1:観光客が訪れる
2:観光客目当てのスケベ根性の地元民が、やらずもがなのみやげ屋を開く
3:景観が破壊される

ということが起こります。一昨年に訪れた白川郷も、多くの家がみやげ物屋になっていて、人が生活している風景を見る、という民俗学的な面白さはもうなくなっていましたからね。

ガイドさんから「むしろ有名でない近くの集落の方が、昔の生活がそのまま残っている」と言われて訪れた村の、なんと静かで落ち着いたたたずまいだったことか。上がらせて頂いた一軒で、おばあちゃんが孫の女の子を呼んで地元の踊りを披露してくれたのですが、素晴らしかったですね。

村おこし、という抽象的な言葉ではなく、具体的なビジョンとして、何をどう変えるのか?を思い描くことが必要であることはもちろん、「何を、変えてはいけないのか?」をしっかりと押えることもまた、必要なのでしょうね。

Wednesday, April 7, 2010

国という単位について思うこと

今回、文化産業戦略のプロジェクトを通じて改めて認識したことがあります。

それは、日本というのはつくづく内向きな国だなあ、ということ。

リンカーン風に言うと「日本人の、日本人による、日本人のための文化産業」という感じなんですよね。

これって常識以上の常識、というか空気みたいな当たり前の感覚になってしまっているんですが、海外の企業を見るとそれが歪んだ常識だということがよくわかります。

例えばシャネル。フランスを代表するラグジュアリーブランドの一つですね。ところが、このシャネルの事実上の本社がニューヨークにあることは余知られていません。勿論、登記上の本社はパリなんですが、HQ機能はニューヨークなんです。そこで国際色豊かな人々がマネジメントに携わっています。なぜニューヨークなのか?細かいことはよくわかりませんが、世界中のマーケーティングをコントロールするにはパリよりもニューヨークの方が都合がいいのでしょう。

そしてシャネルのデザイナーは今はカール・ラガーフェルドで、こちらはドイツ人になります。

これをそのまま日本にずらして考えてみると、イッセイミヤケの本社がシンガポールにあって、デザイナーは中国人、経営者は米国人という様なことがあっても、ゼンゼン有りってことなんですよね。

そもそも経営者もクリエイターも希少な人材なので、国内だけから調達しようとすると、それだけで制約になっちゃいますよね。世界中から、Best and the brightestを集めて戦う、という考え方にシフトする必要があります。もちろんその際は社内の公用語も英語になるでしょう。実際、今のユニクロは社内の経営会議は英語になっていますよね。柳井さんも、もともと英語がお出来にならなかったようですが、事情がそうだからということで勉強されて、今はちゃんと経営会議を英語で仕切っておられる。

こういうことがやはり必要なんだと思います。僕は愛国者ですが一方で偏狭な島国根性も死ぬ程嫌いです。愛国者であるからこそ島国根性を捨てろと言いたい。

今の日本に必要なのは、グローバルソーシング、つまり経営上必要な資源や人材を、日本国内だけでなく、広く世界から調達するという形に切り替えることがだと思います。

Tuesday, April 6, 2010

文化産業創造

ここしばらくお手伝いさせて頂いていた経済産業省さんの「文化産業大国戦略」のプロジェクトが修了して、其の成果が対外的に発表になりました(通常はコンサルティングファームでは依頼主の名は明かせないのですが、今回は特別に許可を頂いています)。

http://www.sankeibiz.jp/business/news/100406/bse1004060503003-n1.htm

http://www.meti.go.jp/committee/materials2/data/g100405aj.html

このプロジェクトの期間中、総勢で50名を超える方にインタビューをさせて頂きました。分野は・・・

:音楽レーベルのプロデューサー
:建築家
:デザイナー
:ゲームデザイナー
:出版社のライツ事業担当者
:映画会社
:広告代理店の地域再生担当
:クリエイティブブティックの広告プランナー
:料理人
:セレクトショップ経営者
:ギャラリーオーナー
:美術品オークション会社経営者 等々

各領域でもグローバルでもトップレベルにある方たちにお話を伺うことが出来ました。皆さん、通常は取って頂いたインタビュー時間でカッチリ終わるのですが、今回はテーマがテーマだけに、頂いていた時間を大幅に超過して問題意識や、打ち手のアイデアを議論させて頂く事が出来ました。

皆さん、やっぱり何とかしたい、何とかできるはず、と思っているんですよね。

感動的だったのは、具体的に計画が動き始めたら、手弁当でもいいから手伝わせて欲しい、と多くの方がインタビューの最後に申し出てくれたことです。よくインタビューの時間すら調整できたな、というくらい世界中を駆け回っている人たちなのですが・・・ありがたく思うと同時に、自らのコミットメントを改めて高めなければと気が引き締まります。

個人的には、これまでの人生で培った人脈より遥かに幅広く、また最前線で戦っている方たちのお話を伺えたと思います。インタビューノートは一生の宝物になるでしょう。

このプロジェクトを通じて、改めて日本の文化競争力の潜在的な力は物凄くあること、それを現状では活かしきっていないことを痛感しました。個人的には、この領域にマネジメントの力を導入し、日本が文化で世界と戦えるようにすることが、自分の後半生のミッションだ!と勝手に盛り上がっています。