ビジュアル・プレゼンテーションの技術







来年の4月から、表記の題名で雑誌「Think!」に連載を持つことになりました(仮題ですが)。

ビジュアル・プレゼンテーションは、戦略コンサルティングにおける基本技能の一つですが、一方で、他産業から転職してきた人が最初につまづいて苦労するポイントの一つでもあります。端的に言って、戦略コンサルタントのスライド作成の技法は、際立ってユニークなんです。

仲間内でよく話すことなのですが、顧客から過去のレポートやプロジェクト計画書をもらうと、それが社内で作ったものなのか、戦略コンサルタントが作ったものなのかは、一瞬で分かります。それぐらい際立って違うのですね。ファームごとの作法の違いがありつつ、見れば一瞬で「どこのファームかはともかく、戦略コンサルタントが作ったのは確か」ということがわかる、というところが非常に面白いところです。

パワーポイントのテンプレートとかプレゼンの技術、ということに関しては世の中に膨大な書籍があるのですが、パッケージをいかにエレガントに作るか、という美意識にまつわる内容については殆ど日本には文献がないみたいですね。今回の連載では、その点、つまりいかに見やすく美しいスライド/パッケージを作るか、という点について書ければ面白いかな、と思っています。

念頭にあるのはEdward Tufteです。この人、アメリカでは非常に有名な人なのですが、なぜか日本では殆ど知られていません。書籍も数多く出していて僕は大好きなのですが、不思議なことに邦訳もされていないようですね。

写真は、そのTufteの最近の書籍である「Beautiful Evidence」の中から、美しいなと思うページをいくつか抜粋したものです。この本は、ある主張を裏付けるための数値なりロジックなりを、いかに美しくエレガントに見せるか、という問題意識に基づいて古今東西からTufte自身が「これは!」と思った様々なマテリアルを集めてきた、という非常に特異な本です。どうですか?実に美しいでしょう?

僕が仕事でレポートをまとめるときは、戦略やストーリーそのものがロジックに基づいてエレガントにまとめられていることはもちろんのこと、見た目が芸術作品と言えるレベルまで美しく結晶化されるように心がけています。最近は、実際のレポート作成はスタッフがやることが多くなってしまって、自分で手を動かす機会が少なくなってしまったのですが、今でも自分で全部のパッケージを作らなければならない、というシチュエーションになると血湧き肉踊る感覚があります。

実は、美しいパッケージやスライドを作るという点に関しては、ビジネス関連の書籍やレポートというのは、あまり学びがありません。恐らくちまたにあふれているパワーポイント本の殆どもそうでしょう。こけおどし的な表現のコツとか、見栄えだけいいけど中身はさっぱりになりがちなテンプレートをいかに多く仕入れても、「人を動かし、企業を動かし、社会を動かす」パッケージは作れないのではないでしょうか?

この点に関して言えば、現実に世界を動かしてきたビジュアル・アウトプットの方が、圧倒的に学びが大きいと思います。それは端的に言えば芸術と科学なんです。このブログのタイトルってことですね。陳腐なテンプレートを学ぶくらいならドラクロワの絵画をじっくりと一日かけて観る方が、または経済学や自然科学のレポートを読み込む方が、ずっと得るものが大きいと思います。レオナルドの素描集なんてヒント満載です。

次の連載では、そういったマテリアルも適宜引用しながら、エレガントなレポートを作る、という点についていくつかのポイントやノウハウを読者の方に開陳できれば面白いかな、と思っています。

ちなみに、表紙と一緒に移っているCDはグールドの平均律です。別に意味はなくって、大きさの目安になるかなと思っただけです。